公園で、友人のミキと久しぶりに会ったときのことです。彼女は3歳の娘を抱きながら、どこか遠い目で呟きました。「正直、時々ね、あなたのような生き方が羨ましくなるの」
その言葉に、私は少し戸惑いました。私は39歳。独身で、会社では中堅管理職として働いています。先週はふらっと思い立って九州一人旅に出かけ、来月はバリ島への短期留学を予定しています。自分の人生に不満はないけれど、「羨ましがられる生き方」だとは思ったことがなかったから。
その後、お互いの近況を話すうちに見えてきたのは、結婚という選択肢を取った人と取らなかった人の、それぞれの「幸せ」と「悩み」の形でした。彼女は愛する家族がいる一方で、自分の時間や自由を犠牲にしていること。私は自由を謳歌する一方で、将来への漠然とした不安を抱えていること。
「結婚する・しない」という選択には、正解も間違いもありません。ただ、それぞれの道に異なる景色が広がっているだけなのです。
今日は、「結婚したくない」と考える人々の心の声に耳を傾けながら、独身生活の現実的なメリットとデメリット、そして一生独身で生きるための具体的な知恵について、深く掘り下げていきたいと思います。これは単なる「独身礼賛」の記事ではなく、多様な生き方の中から「自分らしい選択」を見つけるためのガイドです。
【なぜ「結婚したくない」と思うのか?5つの本音】
最近、「生涯未婚率」が上昇し続けているという統計が示すように、結婚という選択肢を積極的に選ばない人が増えています。それは単なる「結婚できない」ではなく、「結婚したくない」という能動的な選択であることが多いのです。
その背景にある心理を、実際の声から探ってみましょう。
- 自由を何よりも大切にしたい
「私にとって、自由に使える『時間』と『お金』は何物にも代えがたいものなんです」
そう語るのは、32歳でWeb制作の仕事をしている麻衣さん。彼女の友人の多くはすでに結婚していますが、その生活を見て彼女が感じるのは「羨ましさ」より「窮屈さ」だといいます。
「先日、既婚の友人と会う約束をしたのですが、急な姑からの連絡で予定がキャンセルに。彼女は『結婚って、自分だけの意思で動けないのがつらい』と漏らしていました。私は仕事が終われば、その日の気分で映画を見に行ったり、新しいカフェを探検したり。この自由な時間の使い方を手放したくないんです」
麻衣さんの言葉には、現代社会における「自分の人生は自分のもの」という価値観が色濃く反映されています。かつて「結婚して一人前」と言われた時代と比べ、個人の生き方の多様性が認められるようになった現代では、「自分らしさ」を優先する選択が可能になったのです。
また、経済的な自由も重要なポイントです。
「友人夫婦の会話を聞いていると、『このコートを買っていい?』『そんな高いものは…』という金銭感覚のすり合わせが常にあるんです。私は自分の稼いだお金で、躊躇なくガジェットを買ったり、海外旅行に行ったりできる。この経済的な自己決定権は、私にとって大きな幸せなんです」
人間関係の自由も見逃せません。結婚すれば、パートナーの家族や友人とも良好な関係を築く必要があります。それがストレスになるケースも少なくありません。
「友人は結婚後、姑との関係に本当に苦労しています。毎週末の義実家訪問、食事の好み、育児方針…すべてにおいて気を遣い、時には衝突することも。私はそういった『選べない人間関係』に巻き込まれたくないんです」
- 依存関係に陥りたくない
「親の離婚を経験した身として、『人に頼りすぎる生き方』の危うさを痛感しています」
こう語るのは、35歳でIT企業に勤める健太さん。彼の家庭では、母親が経済的に父親に依存していたため、離婚後に大きな苦労をしたそうです。
「父が母に経済的に依存していたのを見て、『自分は違う生き方をしたい』と思いました。誰かに依存するのも、依存されるのも重荷です。自分の人生は自分で支えたい。それが私の原体験から生まれた信念です」
健太さんのように、親の結婚生活を見て「そうはなりたくない」と思う人は少なくありません。特に現代では、経済的自立を重視する価値観が広がり、「一人でも生きていける力」を身につけることが重要視されています。
また、精神的な依存への警戒感も見逃せません。
「前の恋人との関係で、『あなたがいないと生きていけない』と言われる経験をしました。最初は愛情表現だと思っていましたが、次第にその言葉が重荷になっていきました。誰かの人生の責任を背負わされるような関係は、もう二度と持ちたくないんです」
このように、健全な相互依存ではなく、不健全な依存関係に陥ることへの恐れが、結婚を躊躇する理由になることもあります。
- 結婚のメリットが感じられない
「独身でも充実した生活が送れる現代で、わざわざ『結婚』という制度に入る必要性を感じないんです」
そう語るのは、40歳で編集者として活躍する由美子さん。彼女の生活は仕事、趣味、友人関係で十分に満たされていると言います。
「私の周りには、様々な形で幸せに生きている人がいます。結婚して子育てを楽しむ人、パートナーと事実婚の形を選ぶ人、そして私のように独身を貫く人。どの選択も『正解』なんです。仕事も友達も充実しているので、わざわざリスクを取って結婚する必要がないと感じています」
かつて結婚は「社会人としての通過儀礼」的な側面がありました。しかし現代では、結婚せずとも社会的に認められる道が開かれています。また、経済的な面でも、共働きが一般的になった今、「生活を支えるため」という結婚の意義は薄れつつあるのかもしれません。
「結婚して『何を得るのか』より『何を失うのか』の方が私には大きく感じるんです。親密な関係は恋人でも友人でも築ける。法的な保障は別の形で確保できる。だとしたら、結婚にこだわる理由が見当たらないんですよね」
- 子どもを持つことに積極的でない
「子どもが欲しくないなら、結婚する意味はあまり感じません」
38歳のシステムエンジニア、拓也さんはそう話します。
「僕は子どもが好きじゃないわけではないんです。でも、自分の子どもを持って育てたいという強い欲求がない。だったら、法的に縛られる結婚という形態を選ぶ必要もないんじゃないかと思うんです」
結婚と子育ては別の選択肢ですが、日本社会では依然として強く結びついたイメージがあります。子どもを持つ予定がない人にとっては、結婚というステップを踏む動機が弱くなる場合があります。
また、現代社会における子育ての困難さを冷静に見つめる視点もあります。
「友人夫婦の子育てを見ていると、本当に大変そう。保育園の問題、教育費の問題、仕事との両立…。それを見ると『子育ては素晴らしいけれど、自分には向いていないかも』と思うんです。子育ての負担を考えたら結婚する意味が見出せないんですよね」
子どもを持つことへの期待よりも不安が大きい場合、結婚という選択肢から遠ざかることも自然な流れと言えるでしょう。
- 過去のトラウマからの防衛心理
「両親の結婚生活を見て育つと、結婚に対する幻想は早くに捨てました」
29歳の看護師、奈々さんはそう語ります。彼女の家庭では父親の不倫が原因で家庭が崩壊。その経験が結婚観に大きく影響しているといいます。
「父の浮気で家庭が崩壊したので、『結婚=幸せ』という幻想は捨てました。愛し合っていた二人がどうして変わってしまうのか、子供心に理解できませんでした。その記憶が、今でも結婚を躊躇う大きな理由になっています」
親の離婚や不幸な結婚生活を目の当たりにした経験は、子どもの結婚観に大きな影響を与えます。「自分は同じ過ちを繰り返したくない」という防衛心理が働くのは自然なことでしょう。
また、過去の恋愛でのトラウマも影響します。
「以前の恋人との破局がとてもつらい経験でした。あれ以来、深い関係を築くことに恐怖を感じるようになってしまって…。結婚となると、その何倍も深い関係になるわけで、そのリスクを取る勇気がまだ持てないんです」
このように、過去の経験から生まれたトラウマや不安が、結婚という選択肢から遠ざける要因になることもあります。
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