好きになった人にはすでにパートナーがいた。それでも気持ちを抑えられなかった。あるいは、すでにその関係が進んでいて、この先どうなるのか不安を抱えているのかもしれません。
略奪婚という言葉には、どうしてもネガティブなイメージがつきまといます。世間からは批判され、周囲からは冷たい目で見られることも少なくありません。でも、人の心は理屈通りにはいかないもの。好きになってしまったものは、どうしようもないというのが本音ではないでしょうか。
今回は、略奪婚というテーマについて、きれいごとではなく現実的な視点からお話ししていきたいと思います。幸せになれるのか、なれないのか。その答えは単純な「イエス」でも「ノー」でもありません。様々な要素が絡み合って、結果が決まっていくのです。
まず、略奪婚とは何かを整理しておきましょう。既婚者と恋愛関係になり、その相手が配偶者と離婚して、あなたと再婚するという形のことを指します。ドラマや映画ではロマンチックに描かれることもありますが、現実はそう甘くはありません。
正直にお伝えすると、略奪婚を経て結婚した場合、一般的な夫婦が経験しない特別な困難に直面することが多いのが事実です。それを知った上で、どう向き合っていくかが重要になってきます。
最も大きな障壁として挙げられるのは、罪悪感との戦いです。
略奪愛を成就させた後も、パートナーの元配偶者やその子供、そして世間の目に対する罪悪感は、心の奥底に残り続けることがあります。「誰かを傷つけて手に入れた幸せ」という意識が、どこかで自分を責め続けて、純粋に幸福を感じることを妨げてしまうのです。
ある三十代の女性は、こんな風に語っていました。結婚当初は確かに幸せだったそうです。でも、彼の携帯に元妻や子供から連絡が来るたびに、「私がこの家族を壊したんだ」という思いに苛まれて、彼に心から甘えることができなかったと。
この罪悪感は、時間が解決してくれるものではありません。自分自身と向き合い、過去を受け入れる作業を意識的に行わない限り、ずっとついて回る可能性があります。
次に直面しやすいのが、「また同じことが起きるのではないか」という不安です。
考えてみてください。あなたのパートナーは、一度婚姻関係を裏切り、離婚という大きな決断を下した人です。その事実は変えられません。結婚後、ふとした瞬間に「自分もいつか裏切られるのではないか」「他に好きな人ができたら、また離婚するのでは」という思いが頭をよぎることがあるかもしれません。
この猜疑心は、本当に厄介なものです。相手が何も悪いことをしていなくても、疑いの目で見てしまう。携帯を見たくなる。行動を確認したくなる。そうやって相手を信じられない自分に、また自己嫌悪を感じる。この悪循環は、結婚生活の基盤となる信頼関係を少しずつ蝕んでいきます。
そして、見落としがちだけれど非常に重要なのが、元家族との関係という現実です。
特に相手に子供がいる場合、養育費の支払いや面会交流など、元配偶者との関係は生涯にわたって続きます。これは避けられない事実です。あなたは、元家族との関係にまつわるストレスや、毎月の生活費とは別に支払われる養育費という現実と向き合わなければなりません。
金銭的な負担だけではありません。子供の運動会や卒業式など、元家族が関わるイベントのたびに、複雑な感情を抱えることになります。「自分の存在」と「元家族の存在」をどう折り合いをつけていくか、これは想像以上に精神的なエネルギーを消耗する問題です。
ここまで読んで、「やっぱり略奪婚は不幸になるのか」と思われたかもしれません。でも、そうとは限らないのです。
これらの障壁を乗り越えて、幸せな結婚生活を送っている人たちも確かに存在します。ただし、それには通常の結婚以上に強い覚悟と具体的な行動が必要になります。
幸せな略奪婚を実現するために、まず取り組むべきは「過去の完全な清算」です。
新しい結婚生活を始める前に、二人の間で過去をきちんと整理し、今後のルールを定めることが欠かせません。なぜ前の結婚生活が破綻したのか、正直に話し合ってください。コミュニケーション不足だったのか、価値観の違いだったのか、経済観念の問題だったのか。その原因を明確にして、二人の間で同じことが起きないよう、具体的な対策を決めておくのです。
また、「元」を現在の生活に持ち込まないという覚悟も重要です。もちろん、子供との関係など必要な連絡は別として、元配偶者との不必要なつながりは整理してもらいましょう。SNSでの繋がりや、思い出の品など、過去を引きずるものは可能な限り処分する。「現在の二人の生活を最優先する」という誓いを、お互いにきちんと立てておくことが大切です。
次に意識してほしいのは、精神的な自立です。
略奪愛を経て結ばれた二人は、世間から孤立しがちです。友人や家族から距離を置かれることもあるでしょう。だからこそ、お互いに精神的に自立し、外部に依存しない関係を築くことが重要になってきます。
パートナーだけがあなたの世界のすべてになってしまうと、健全な関係を保つのが難しくなります。仕事や趣味を通じて新しい友人関係を築いたり、自分だけのコミュニティを持ったりすることで、精神的なバランスを保ってください。
そして、二人の間で「略奪」という言葉を封印することをおすすめします。過去の経緯をネガティブな言葉で振り返り続けると、いつまでも罪悪感から抜け出せません。「私たちは選んでこの関係になった」「お互いを選び合った」というポジティブな認識に置き換えていくことで、前を向いて歩き始めることができます。
最後に、そして最も重要なのが、「愛」を「信頼」に変える努力です。
情熱的な愛だけでは、結婚生活は長続きしません。特に略奪婚の場合、一度裏切りを経験している相手だからこそ、信頼を築くことに人一倍の努力が必要になります。
具体的には、小さな約束でも必ず守ること。言っていることと行動が一致していること。こういった日々の積み重ねが、「この人は裏切らない」という揺るぎない信頼を少しずつ築いていきます。
また、感謝の気持ちを言葉にすることも忘れないでください。困難な状況を一緒に乗り越えてくれた相手に対して、「当たり前」にせず、「ありがとう」と伝え合う習慣が、二人の絆を強くしてくれます。
ここで、実際に略奪婚を経験した方々の声を紹介させてください。
四十代の女性は、こんな経験を語ってくれました。彼には子供がいたため、離婚調停は泥沼化し、結婚までに三年もかかったそうです。結婚後も、彼が養育費を支払ったり子供と面会したりするたびに、彼女の心はざわついたと言います。
でも、彼女は乗り越えることができました。その理由は、彼が何度も真剣な言葉をくれたから。「君を失うくらいなら、何を失っても構わない」と。その言葉が、彼の覚悟の表れだと感じられたのです。
彼女はこう言っていました。「略奪婚は『愛の炎』でスタートしますが、それを維持するのは『覚悟の重さ』なのだと実感しています。常に『お互い、この結婚を続けるために何ができるか』を話し合っています」と。
一方で、うまくいかなかったケースもあります。
三十代前半の女性は、結婚はできたものの、彼のSNSを毎日のようにチェックし、過去を詮索してしまい、常に不安だったそうです。ある日、彼の元妻がSNSにアップした子供の写真を見て、「私が彼から家庭を奪った」という罪悪感に押しつぶされてしまいました。
結局、彼女は自ら離婚を切り出しました。「幸せになれるかどうかは、相手の問題ではなく、自分の心が『幸せだと受け入れる』ことができるかどうかにかかっていると悟りました」と、彼女は振り返っています。
このケースでは、相手側の清算が不十分だったという問題もありますが、それ以上に本人の「自己肯定感の低さ」と「過去への執着」が、せっかく手に入れた幸せを自ら壊してしまったのです。
これらの体験談から見えてくるのは、略奪婚の成否を分けるのは、外部の環境だけではないということ。自分自身の心の持ち方が、結果を大きく左右するのです。
略奪婚は、ゼロからのスタートではありません。マイナスからのスタートです。
情熱的な愛が、離婚という障害を乗り越える原動力になったとしても、その後の幸せは「新しい結婚生活を、いかに過去の影から切り離して再構築できるか」にかかっています。
重要なのは、二人でしっかりと過去の失敗から学び、未来のルールを定めること。そして何よりも、自分自身が幸せを受け入れる覚悟を持つことです。
「誰かを傷つけて得た幸せだから、自分は幸せになってはいけない」という思いがあるなら、それと向き合う必要があります。過去は変えられません。でも、これからをどう生きるかは、あなた次第なのです。
もしあなたが今、略奪婚を考えているなら、あるいはすでにその道を歩み始めているなら、覚えておいてほしいことがあります。
幸せは、誰かが与えてくれるものではありません。自分で選び取り、自分で守っていくものです。その覚悟があるかどうか。そして、パートナーにも同じ覚悟があるかどうか。それが、略奪婚を幸せなものにできるかどうかの分かれ道になるのです。
どんな形で始まった関係であっても、そこから先は二人の努力次第です。過去に縛られず、未来を見据えて歩んでいけることを願っています。
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