木曜日の夕方、オフィスに残っていた私は、同僚の彼が「今日も遅くなるの?送るよ」と声をかけてくれた瞬間、なぜか急いで「大丈夫です、主人が迎えに来るので」と嘘をついていました。実際は夫が出張中で、一人で帰るつもりだったのに。彼の優しさに触れるたび、胸がきゅっと締め付けられる感覚と、それを必死に押し殺そうとする自分がいる―そんな経験、あなたにもありませんか?
「好き」という感情は、時に私たちを混乱させます。特に結婚という誓いを交わした後に芽生えた好意は、罪悪感や自己嫌悪、葛藤を伴うもの。そして多くの既婚女性が選ぶ対処法が「好き避け」なのです。
今日は、あまり語られることのない「既婚女性の好き避け」について、その心の奥底にある複雑な感情や行動パターン、そして実際の体験談を通して、深く掘り下げていきたいと思います。もしかしたら、あなた自身や身近な人の行動に思い当たる節があるかもしれません。
好き避けとは? 〜言葉にできない感情の矛盾〜
そもそも「好き避け」とは何でしょうか?これは好意を抱いているにもかかわらず、あえてその相手を避けるという、一見矛盾した行動を指します。好きだからこそ距離を置く―この不思議な心理は、特に既婚女性の場合、より複雑な形で表れることが多いのです。
「好きだから近づきたい」という自然な感情と、「既婚者だから距離を置くべき」という道徳的な判断が衝突するとき、多くの女性は後者を選びます。しかし、感情は簡単に切り替えられるものではないため、その葛藤が「過剰な回避行動」という形で表れるのです。
私の友人の明美さん(仮名)は、子供の習い事の送迎で知り合ったシングルファザーに好意を抱いてしまいました。「彼と話すのが楽しくて、つい長話してしまうんです。でも、それに気づくと急に罪悪感で胸がいっぱいになって…結局、次の週からは夫に送迎を頼むようになりました」と語ります。
好き避けは単なる「避ける行動」ではありません。むしろ、それは「避けなければならない」という強迫観念から生まれる複雑な防衛機制なのです。では、既婚女性がこのような行動を取る背景には、どのような心理が隠されているのでしょうか?
既婚女性の心の奥に潜む7つの感情
既婚女性が好き避けをする背景には、様々な感情が複雑に絡み合っています。その中でも特に強く影響を与える7つの感情を掘り下げてみましょう。
- 「罪悪感」という重い鎖
「結婚しているのに他の人を好きになるなんて、私はなんて軽い女なんだろう」
多くの既婚女性が、このような自己批判に苦しんでいます。結婚は愛と忠誠を誓う契約であり、それを破るような感情を抱くことへの罪悪感は非常に強いものです。この罪悪感が、好意を抱いた相手との接触を避ける主な原動力となります。
30代の主婦、由美さんは、こう打ち明けてくれました。「子供の担任の先生に、何となく惹かれていることに気づいたとき、自分が嫌になりました。夫は何も悪くないのに、こんな気持ちを抱く自分が許せなくて。三者面談の時も、必要最低限のことしか話せませんでした」
この罪悪感は、自分を責めるだけでなく、相手に対しても「迷惑をかけてはいけない」という気持ちに繋がります。そのため、自分の気持ちを隠すために、過剰なまでに距離を置く行動が生まれるのです。
- 「恐怖」という防御本能
好き避けの背景には、様々な恐怖も存在します。「もし気持ちがバレたら?」「周囲に噂されたら?」「家族に影響が出たら?」という不安は、既婚女性を強く縛るものです。
40代のキャリアウーマン、久美子さんは、職場の後輩に対する好意に気づいたとき、パニックに陥ったと言います。「彼と二人きりになると、心臓がバクバクして、自分の気持ちが顔に出ているんじゃないかと不安でした。だから、彼がいる場所には極力行かないようにしたり、メールも事務的な内容だけにしたり。今思えば、明らかに不自然な態度だったと思います」
この恐怖は単なる噂への恐れだけでなく、自分の感情に対するコントロールを失うことへの恐怖でもあります。「好き」という感情は時に理性を超える力を持つため、その力に飲み込まれることへの警戒心が、過剰な回避行動につながるのです。
- 「自己保存」という本能
自分の生活や家族を守りたいという「自己保存本能」も、好き避けの大きな要因です。多くの既婚女性は、たとえ現在の結婚生活に不満があったとしても、それを壊すリスクを冒したくないと考えます。
35歳の会社員、理恵さんは、部署異動で知り合った同僚に心惹かれた経験を語ります。「正直、当時は夫との関係も冷え切っていて、彼の優しさに救われる思いでした。でも、子供のことを考えると、この感情を発展させるわけにはいかない。だから、できるだけ彼と二人きりになる状況を避けるようになりました」
この自己保存本能は、現状維持を選択する力となります。たとえ心の奥で別の可能性を考えることがあっても、現実的なリスクを前にして、多くの女性は感情を抑え込む道を選びます。
- 「葛藤」という内なる戦い
好きな気持ちと道徳的な判断の間で揺れ動く「葛藤」も、好き避けの中核を成す感情です。一方では好意を抱いた相手との関係を深めたいという欲求があり、他方では既婚者としての責任を果たしたいという願望がある―この相反する二つの気持ちの間で、多くの女性が板挟みになります。
38歳の教師、千春さんは、保護者の一人に対する感情に戸惑いを覚えたと言います。「彼が子供の送り迎えに来るたびに、少し話すのが楽しみだったんです。でも同時に、『これは先生として適切じゃない』という罪悪感も感じていました。結局、事務的な対応しかできなくなり、彼も戸惑っていたと思います」
この葛藤は、一貫性のない行動を生み出します。時には親密になりたいという気持ちが前面に出て友好的に接し、また別の時には道徳的な判断が勝って冷たい態度を取る―このような矛盾した行動が、相手を混乱させる「好き避け」の特徴となるのです。
- 「自己否定」という沼
「既婚者なのに他の人を好きになるなんて、私はダメな人間だ」
このような自己否定の感情も、好き避けの原因となります。社会的に「良い妻」「良い母親」とされる基準に自分を当てはめ、それから外れる感情を抱くことで自分自身を否定してしまうのです。
42歳の主婦、真理子さんは、子供の学校行事で知り合った父親に好意を抱いてしまい、自己嫌悪に陥った経験を語ります。「私なんて最低だ、と思いました。だから、彼の前では笑顔も見せられなくなって。本当は話したいのに、彼が近づいてくると緊張して逃げ出すような状態でした」
この自己否定は、好意を抱いた相手との接触を避けることで、自分の「悪い部分」を封じ込めようとする行動につながります。自分を罰するような形で相手を避けることで、罪悪感を和らげようとするのです。
- 「現実逃避」という防衛機制
時に好き避けは、自分の感情と向き合うことから逃げる「現実逃避」の一形態でもあります。好きという気持ちを認めると、自分の結婚生活や価値観について考え直さなければならないかもしれない―そのような内省を避けるために、問題の源(好意を抱いた相手)から物理的に距離を置くのです。
37歳のパート勤務、絵美さんは、職場の上司に対する感情に気づいたとき、転職を考えるほどパニックになったと言います。「この感情が何を意味するのか、なぜ夫ではなく彼に心惹かれるのか―そんなことを考えたくなかった。だから、彼との接触を極力減らして、自分の中でその感情の存在を否定しようとしていました」
現実逃避は一時的な安心をもたらしますが、根本的な問題解決にはなりません。そのため、避ければ避けるほど、心の中では相手への思いが募るというパラドックスが生じることもあるのです。
- 「憧れ」と「理想化」の錯覚
既婚女性が他の男性に惹かれる場合、実際の相手ではなく、その人に投影した「理想像」に恋をしていることもあります。日常の家事や育児、仕事に追われる中で、現実的な問題から解放された「純粋な関係性」への憧れが、好意という形で表れることがあるのです。
34歳の会社員、奈々子さんは、取引先の担当者に好意を抱いた経験をこう分析します。「彼とは仕事の話しかしないので、家庭の問題や育児の悩みなど、現実的な問題がない関係なんです。だから、実際の彼ではなく、そういう『現実を忘れさせてくれる存在』に惹かれていたのかもしれません」
この「憧れ」や「理想化」に気づくと、自分の感情が実は現実逃避だったことに気づき、さらに罪悪感を抱くことも。そのため、相手との接触を避けることで、この複雑な感情のサイクルから抜け出そうとするのです。
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